第49回全国自衛隊サッカー大会:観戦レポート〜サッカーの素の面白さを求めて

4月下旬、夏の気候と冬の気候が交互に攻めてくるのもいよいよ落ち着いた。1年で最初に「夏」を感じるのはちょうどこの頃だ。そして毎年恒例となっているこの行事もちょうどこの頃であり、この行事に差し当たるといよいよ夏を迎えるんだという実感がわく。4月25日(土)に駒沢オリンピック公園補助競技場で自衛隊サッカー大会の準決勝が行われた。

炎天下一歩手前の気候の中、黙々と試合が進行され、一方で隣の球技場では高校生の大会が賑やかに行われ、どこからとも無くアイドルの青空ライブの音声と合の手が響き渡る。この雑多な雰囲気こそ首都の総合運動公園である駒沢オリンピック公園らしい。また、本大会において補助競技場の観客は家族であれ金網の外での観戦を強いられる。四方が金網に囲まれているここ補助競技場で行われる試合は「金網デスマッチ」などと比喩されることがあるが、決勝戦を賭けた試合を雰囲気的なアウェイで行う今こそまさにその比喩がふさわしい。余計なものは一切ない、基地の名誉を賭けた真剣勝負が繰り広げられていた。

準決勝、陸上自衛隊習志野駐屯地vs海上自衛隊下総航空基地

第1試合は陸上自衛隊習志野駐屯地(AIR BORNE)と海上自衛隊下総航空基地の試合が行われた。長いので陸上自衛隊習志野駐屯地は陸自習志野、海上自衛隊下総航空基地は海自下総とそれぞれ略す。自衛隊基地としては陸自習志野はエリートだという。一方サッカーでは海自下総は千葉県1部に所属しており、準々決勝で敗退した空自入間第3補給処(FC 3DEP=埼玉県1部)と並んで日本サッカーのピラミッドの中では本大会参加チームを見渡しても上位の方だ。とくに近年は補強も積極的に行っているなど、力をつけてきているらしい。

試合はとてもシンプルな構図となった。海自下総が丁寧にパスを繋いで攻撃を組み立てようとする一方で、陸自習志野は徹底した守備と縦パスひとつで突破を試みる。カテゴリ差に違わない「パスサッカーとカウンターサッカー」、より抽象的に言えば「強者のサッカーと弱者のサッカー」が繰り広げられた。  

 

結果的に海自下総が4-2で勝利した。しかしその過程で海自下総はパスサッカーからシュートまでうまく持ち込めない時間が長く、その裏を突くように陸自習志野に先行される試合展開だった。何とか押し切れたのはサッカーの質という一言で片付けてしまうが、これまでの1週間ほぼ毎日真剣勝負をしてきた上でのこの粘り強い勝ち方は感服する。

準決勝、海上自衛隊厚木基地マーカスvs海上自衛隊厚木基地なかよしFC

第2試合は海上自衛隊厚木基地マーカスと海上自衛隊厚木基地なかよしFC(厚木A.N.F.C)が対戦した。その名の通り、海上自衛隊厚木基地同士の対戦だ。マーカスは関東リーグ2部に所属しており、自衛隊チームとしては最上位のカテゴリに属している。マーカスは自衛隊サッカー大会では優勝が約束された「絶対王者」だ。なかよしはマーカスの言わばOBチームにあたる。両チームともに同じ基地ということでよく知っているチームとあり、試合前から試合相手というのを忘れるほど仲の良さそうな雰囲気があった。お互いに勝手を知っているからこそ、絶対王者のマーカスにとっては天敵であり、「厚木基地ダービー」は本大会の目玉でもある。

試合は戦前の予想通り、マーカスが支配して、なかよしが我慢する展開となった。なかよしはとにかく攻撃の起点となるボールをことごとく潰していく。マーカスの選手らから非常にやりにくい表情が読み取れた。先の陸自習志野と海自下総の試合のように、もしかしたら守備に回っている方が先に点をとるかもしれない・・そんな緊張感すら感じさせた。

マーカスが押し切るか、なかよしが裏を突くか・・そんな我慢比べは、マーカスがFW守永将平選手の2得点で押し切って勝利した。試合後、守永将平選手に話を聞くと、とにかく「勝つ」ことに関して強いこだわりを感じた。優勝候補として、挑戦を受ける者として試合に臨まなければならない難しさはあるだろう。その難しさを跳ね除けて、当たり前のように決勝戦に駒を進めるのがいかに難しいかは容易に想像がつく。

決勝戦に駒を進めたのは海上自衛隊下総航空基地と海上自衛隊厚木基地マーカスの2チームとなった。過去48回行われた本大会で11回の優勝経験のある『古豪』海上自衛隊下総航空基地と17回の優勝経験のある『絶対王者』海上自衛隊厚木基地マーカスの対戦だ。

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